記事作成日:2026/09/27 最終更新日 : 2026/10/01

社長の株式を後継者に引き継ぐための生前対策


社長が亡くなると、社長が持っていた株式を誰が引き継ぐかが決まるまで、会社の次の役員を選任できない場合があります。取締役が社長1人だけの会社では、その間、会社を代表して契約や支払いの手続きをする人がいない状態が続きます。亡くなった後の手続きについては、代表取締役の死亡と会社の手続き(株式の相続と役員変更登記)で説明しています。

こうした事態は、社長が元気なうちに、株式の行き先と会社の決まりを整えておくことで避けられます。当事務所は会社の登記と相続の両方を扱っているため、遺言の作成、定款の見直し、後継者を役員に加える登記までを、同じ事務所でまとめてご依頼いただけます。日中は本業で手が離せない経営者さまも多いため、平日の夜や土日祝日の面談にも対応しています。


遺言で株式の引き継ぎ先を決めておく

遺言がない場合、社長の株式は、遺産分割協議がまとまるまで相続人全員が共同で持っている状態になります。話し合いに時間がかかれば、その間は株主総会で役員の選任も進みません。遺言で後継者に株式を遺すと決めておけば、相続人の話し合いを待たずに、後継者が株式を引き継げます。

なお、遺言で決められるのは株式を誰に遺すかで、次の社長を遺言で直接指名することはできません。後継者に社長を任せたいという希望を遺言に書き添えることはできますが、法的な効力はありません。株式を引き継いだ後継者が、株主として株主総会で自身を役員に選任するという順番になります。遺言の内容を実行する人(遺言執行者)を遺言の中で決めておくと、遺言執行者が株主名簿の書き換えなどの手続きを行えます。

一方で、配偶者や子どもには、法律で最低限の取り分(遺留分)が認められています。株式を後継者に集中させると、他の相続人から金銭での支払いを求められることがあります。遺留分の請求は金銭での支払いに限られるため、株式そのものを取り戻されることはありませんが、後継者が金銭を用意できるよう、預貯金など株式以外の財産を誰に遺すかもあわせて考えておく必要があります。金額の計算は税理士、争いになった場合は弁護士が相談先になります。

後継者を取締役に加えておく

株主も取締役も社長1人という会社では、後継者を今のうちに取締役に加えておけば、社長が亡くなっても後継者が取締役として残るため、会社を代表する人がいない状態を避けられます。

株主総会で後継者を取締役に選任し、役員を追加する登記を行います。定款で取締役の人数が決まっている場合は、先にその定めを確認し、必要であれば定款を変更します。

定款を今の会社に合わせて見直す

遺言で株式の行き先を決めても、定款の内容によっては、遺言どおりに会社を引き継げないことがあります。株主が社長以外にもいる会社では、相続人から株式を買い取れる定めに注意が必要です。この定めは社長自身の株式にも適用されるため、社長の相続の際に、他の株主の意向で後継者が株式を手放すことになる場合があります。

後継者を取締役に加えて取締役が2人以上になる場合は、代表取締役の定め方も確認しておきます。取締役会を置いていない会社では、代表取締役を定めていなければ、取締役それぞれが会社を代表します。代表取締役は、定款のほか、定款に基づく取締役の互選や株主総会の決議で定めることができるため、社長が亡くなった後にどの方法で代表取締役を選定するかを、定款で決めておきます。

定款の変更には、登記が必要なものと不要なものがあります。代表取締役の定め方や、相続人から株式を買い取れる定めは登記簿に載らないため、定めを変えること自体に登記の費用はかかりません。ただし、その定めに基づいて代表取締役を新たに選定する場合は、その登記が必要です。

クラウド会計ソフトなどの提携サービスにあるひな形や、生成AIで作成した定款のままの会社では、これらの定めが入っているかを社長自身も把握していないことがあります。定款の作り方については起業(会社設立)の流れと費用、必要書類でも触れています。定款が見当たらない場合は、再作成も承ります。

生前に株式を譲っておく方法

遺言のほかに、社長が元気なうちに、贈与や売買によって後継者へ株式を譲渡しておく方法もあります。亡くなった時点で後継者がすでに株式の過半数を持っていれば、相続人の話し合いを待たずに、役員の選任を進められます。

一度にすべてを譲らず、何年かに分けて譲る方法もあります。後継者が株式の過半数を持てば、役員の選任など多くの決議を単独で行えるようになり、3分の2以上を持てば、定款の変更などの重要な決議も行えます。どの時点でどこまで譲るかは、贈与税などの負担と合わせて決めることになります。

株式の譲渡を制限している会社では、会社の承認と、株主名簿の書き換えが必要です。株式は登記簿に載りませんが、古くからある会社では株券を発行する会社になっていることがあり、その場合は株券を渡さなければ譲渡の効力が生じません。登記簿や定款で確認し、株券を発行していない場合は、譲渡の前に株券を発行するか、株券を発行する旨の定めを廃止する登記を行います。株式の贈与税や譲渡の際の税金については、税理士にご相談ください。

会社の借入れの保証について

社長が会社の借入れの保証人になっている場合、その保証も相続の対象になり、遺言の内容にかかわらず、金融機関から相続人に請求が及ぶことがあります。そのため、財産をほとんど受け取らない相続人が、相続放棄を選ぶこともあります。後継者も含めて同じ順位の相続人が全員放棄すると、社長の親や兄弟姉妹が相続人になり、株式がその人たちに渡ることもあります。

保証の扱いは、後継者への引き継ぎにあわせて、早めに金融機関と話し合っておくことをおすすめします。相続放棄を選ぶ場合は、相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所への申述が必要です。当事務所では、家庭裁判所に提出する書類の作成も承ります。

実費の目安

公正証書遺言は、公証人の手数料がかかり、遺す財産の額によって金額が変わります。役員を追加する登記には登録免許税がかかり、定款の変更は、登記が必要な内容の場合に登録免許税がかかります。このほかに、戸籍や証明書の取得費、郵送費がかかります。

当事務所の報酬は、公正証書遺言の作成で5万円〜、役員を追加する登記で5万円〜が目安で、遺言の内容や財産の種類、調査の範囲によって変わります。定款の見直しは、変更の範囲に応じてお見積りします。正式なお見積りはご相談時にお渡しします。

ご相談について

当事務所は、平日の夜や土日祝日も、予約をいただければ面談に対応します。Google Meetでのオンライン相談を中心にしているため、全国どこからでもご相談いただけます。

初回のご相談は無料です。相談が長時間になる場合など、費用が発生するときは事前にお知らせします。見積りをご確認のうえ、正式に依頼される(委任契約を結ぶ)までは、費用はかかりません。

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よくある質問

Q. 遺言は自分で書いたものでも使えますか。

A. 決められた形式を守って書かれていれば使えます。ただし、形式に不備があると無効になることがあり、亡くなった後に家庭裁判所での検認も必要です。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば検認は不要になりますが、法務局が確認するのは形式だけで、内容までは確認されません。会社の株式の引き継ぎについては、形式の不備によって遺言が無効になることを避けるため、公正証書遺言をおすすめしています。

Q. 後継者を今のうちに取締役にしておくことはできますか。

A. できます。株主総会で後継者を取締役に選任し、役員を追加する登記を行います。社長が亡くなった後も後継者である取締役が残るため、相続の話し合いを待たずに、新しい代表者の選定や登記を行えます。定款で取締役の人数が決まっている場合は、先に定款の変更が必要になることがあります。

Q. 株式を長男に、預貯金を長女に、と分けて遺すことはできますか。

A. できます。財産ごとに誰に遺すかを遺言で決められます。ただし、株式の評価額が大きいと、長女の取り分が遺留分に届かない場合があるため、税理士とあわせて金額を確認しておきます。

Q. 定款を変えると、登記が必要ですか。

A. 登記が必要な場合と、不要な場合があります。商号や事業の目的など登記簿に載る内容を変える場合は登記が必要ですが、代表者の選び方や役員の任期、相続人から株式を買い取れる定めなどは、定款を変えても登記は不要です。ただし、変更によって役員が退任した場合や、代表取締役を新たに選定した場合は、その登記が必要です。

Q. まだ後継者が決まっていません。今のうちにできることはありますか。

A. 定款の見直しは、後継者が決まっていなくても進められます。社長が亡くなった後に、代表者を選定できる内容になっているかを確認しておくだけでも、代表者を選定できないまま手続きが止まることを防げます。


本ページの内容は、最終確認日時点の法令に基づいています。

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